2011年1月13日木曜日

向田邦子

私の周りには小説を読む人間が極端に少ない。
そんな中、今まで小説を読まなかった人間が、
ある切っ掛けを元に小説を読み始めたという話を幾度か耳にした。
その切っ掛けとなっているのが'向田邦子'である。

彼らに共通して言えるのは、
あるドキュメンタリーで紹介された向田邦子のスナップ写真を目にした事。
向田邦子が多くを語らなかったとされる'彼女の恋人'が撮影した物のようだ。
そのスナップはまさに愛にあふれ、これ以上無い程に美しいものだったという。
そこに潜む撮る者と撮られる者の心情の絡まり合いが、
如実に表れている様に感じた、と言うのである。
1枚のスナップから始まった作品への関心。
そんな話を何度か耳にすると気になって仕方がない。
という事で母の書棚から'向田邦子'を引っ張り出してきた。

とりあえず「あ・うん」と「父の詫び状」「蛇蝎のごとく」を読んでみた。
感情を説明するような表現はほとんどなくて、
淡々と日常のコマを積み重ねていくような印象を受けた。
情景描写が巧みで、懐かしい雰囲気と当たり前の日常が細かく記される。
どこか傍観者然としていて、客観的に自分の経験や思考を見返しているようだ。
そしてそれを小気味良い文章に起すことによって、
向田像がより強化されているのではないだろうか。

はじめて向田邦子を読んだ、スナップはまだ見ていない。

niico

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